誰かの話。08
「あいつのどこがいいの?
バーベキューの時見かけたけど、
今まで見た人の中で、
一番暗い顔してたよ。」
誰かの話。07
「何が食べたい?」
「うーん、じゃあイタリアン!」
「イタリアンいいね。
丁度美味しいお店を知ってるよ。」
「何てお店?」
「内緒。今度連れてくよ。」
誰かの話。06
「ファンから貰ったものの中で、
一番印象に残っているものは?」
「僕の絵ですね。等身大の。」
誰かの話。05
「小さい頃の記憶って、案外ありますよね。
僕は、お腹の中にいた頃の記憶があります。
あったかかったですね。」
誰かの話。04
「衝撃的だった出来事ね。
若い時は、世界の色んなところに一人旅していたんだけど、
ドイツに行った時に、公衆トイレに入って。
個室の方なんだけど。
海外のトイレって、日本よりもっと上も下も、
トイレとトイレの間の壁の隙間が広いんだよね。
アメリカとかもそうなんだけど。
何となく分かる?
それで、まぁ普通に用を足してたんだけど、
隣りの個室にも誰か入ったんだよね。
トイレは広かったから、もっと離れたところに入ってもいいのにって思ってたら、
床に影が出来てて。
えっ、て思って上の方見たら、
隣りの個室から、おっさんがこっち覗き込んでんの。
もう焦って。
"Get out!"って叫んだよ。
英語なんてろくに喋れなかったけど、
それくらいは何とか思いついて。
そしたら逃げてった。
そこで逃げてかなかったらどうしただろうとも思ったよ。
世界には色んな人がいるもんだよね。」
誰かの話。03
「本気で言ってるなら、
毎日8時間は当たり前にこなして下さいね。」
誰かの話。02
「あの頃、まだ私が可愛かった頃の話よ?
アイディアが溢れる程に出て来て、
とにかく浮かんだものを描いていったの。
デザインは学んだものの、作る技術も必要だと思って、
彫金の学校にも通った。
寝る暇も無いくらいだったけど、
溢れるものを止める事が出来なかったし、
夢中だった。
始めは自分で考えて、作って、ってやっていたけれど、
だんだん追いつかなくなって来て。
賞も戴いたりするようになって、
私の作品を良いと言って下さる方も増えて、
1人じゃ回せなくなって来たから、
職人を雇った。
自分でも作る事をやっていたお陰で、
おかしいところがあれば分かるし、
こだわりもあるから、雑にされていると分かるから、やり直させるし。
でも最近はダメね。目が悪くなって来て。
浮かんだものを描いて、作って、売って。
売る事は本当に大事。
そのために作ってるんだもの。
お客様に実際に身に付けて貰って、意見を貰ったり、
ああ付けてみるとこうだな、って、自分でも分かったり。
現場での意見は貴重だし、
次に作る時の参考になるから。
お客様の笑顔を見ると、また頑張ろうって思えるじゃない?
でもその行程全部を1人でこなすって、
もうこの規模になると無理なのよ。
だから振り分けてお願いしているし。
私は作る事に集中したいの。
買って下さるお客様もいるんだから。
そのためにあなたを選んだのよ。」